就職したとき
雇用主は、労働の基本となる次の事項については、書面の交付によって明示しなければなりません。この書面が雇用契約書(労働条件通知書)です。
・労働契約の期間
・就業の場所
・従事する業務の内容
・賃金(賃金の決定(額)、計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期・昇給に関する事項)
・労働時間
・始業、終業の時刻
・早出、残業の有無
・休憩時間
・休日
・休暇
・交替制勤務の場合の就業時転換に関する事項
・退職
なお、パートタイム労働法では、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の明示を規定しています。
また、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の場合は、有期労働契約に関する基準(厚生労働省告示)により、更新の有無に関する事項を明示しなくてはなりません。
加えて、「固定残業制」で支払っている場合には、何時間の残業代を含んでいるのか、その時間を超えた残業代を支払う旨、説明及び明示する必要があります。
もし、雇用契約書(労働条件通知書)を雇用主が出さないというのであれば、それは雇用主が義務を果たしていないということになります。この場合は、労働者から請求するしかありませんが、請求してももらえない場合は、労働基準監督署などで労働者からの相談を受け付けています。
社会保険には、「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」があります。
いずれも、雇用者や労働者の意思で加入の有無を決めることはできません。
「労災保険」は雇用形態を問わず、すべての労働者が加入します。
「雇用保険」は、主たる賃金を受ける1つの事業所においてのみ、加入します。
(65歳以上の方は、「マルチジョブホルダー制度」を利用すると、特例で複数の事業所で雇用保険に加入することができるようになりました。)
「健康保険」と「厚生年金保険」への加入条件は、
・1つの職場でフルタイム労働者の4分の3以上の所定労働時間・所定労働日数で働いていて「常用的使用関係がある」とみなされる場合
・常時101人以上の企業に勤務している学生ではない方で、週の所定労働時間20時間以上、月額8.8万円以上の給与を得ている場合
国民年金第3号被保険者の条件は、すべての収入を合算し130万円以下ですが、2番目の条件では、1か所からの給与が年間105.6万円になると、自分で健康保険・厚生年金を支払うことになりますので注意してください。
この考え方からすれば、「8時45分までに出社してください」と言われた場合、「できるだけ8時45分までに来てほしい」という要望なのか、「必ずこの時間まで来なさい」という命令なのかで異なってきます。
できるだけ始業時間の15分前には来てほしいということであれば、その時間までに出社するかしないかの判断は労働者の自由ということになり、「労働時間ではない」と考えられます。しかし、「必ず出社」という強制であったり、この時間にミーティングや伝達事項など実質的な仕事が行われているならば、「労働時間」と考えられます。業務命令によるものであれば「労働時間」となり、当然、賃金の問題も出てくるということになります。
しかし、更衣等の作業準備行為を事業所内において行うことを使用者から義務づけられたり、それを行うことを余儀なくされた場合には、使用者の指揮命令下に置かれたものとして、そうした更衣時間は労働時間に当たると判断した最高裁の判例があります。ただし、それも社会的通念上必要と認められるものに限るとしています。
実際には、危険作業のための安全具の装着や特殊な制服など、着脱に時間がかかるようなもので、その行為に一定の強制力(法律等で義務付けられているなど)がある場合、労働時間に含まれると解釈されています。
「労働の途中に」というのは、休憩時間は就労の途中で疲労を回復させることが目的ですので、始業から終業までの間にとらせなければならないと定められているのです。
たとえば質問のように「週5日、1日5時間」の契約を結んで働いている期間は、仕事がないからという理由でシフトを減らしたり、3時間で帰らせることは本来できません。雇用契約にあたって日数、時間帯をお互いの了解のもとで決定しているわけですから、会社はその時間は労働を提供してもらい、賃金を支払う義務があります。
また、会社都合による休業の場合は休業手当(平均賃金の60%)を支給しなければならないとされています。
とはいえ、想定外に閑散とした状況が続くと事業の継続そのものが危ぶまれる状態に陥ることになります。日頃からシフトの減少は生活に影響が出てしまうなど窮状を伝えたり、幹部社員とコミュニケーションを取るなどして、経営状態を見極めることも大切です。
時間外手当を表にすると、次のようになります。
したがって、法定労働時間を超えて働いた場合は、時間外手当を支払ってもらえます。時間外手当の支払いがない場合は、締切日、支払日などがどうなっているのか、「就業規則」で確認してみてください。
ただし、一日の所定労働時間が7時間というような場合は、就業規則でとくに定めのない場合、割増して支払われるのは8時間を超えた時間からということになります。
例えば、時給1000円の人が9時から23時まで働いた場合
(注)平成22年4月1日に改正労働基準法が施行され、月60時間を超える時間外労働に対する割増率は50%になります。深夜の時間帯に月60時間を超える時間外労働になった場合の割増率は75%になります。なお、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度(代替休暇)を設けることもできますが、労使協定が必要です。 *ただし、この法律は、中小企業については当分のあいだ猶予されます。あなたが勤務している会社が該当するかどうかについては、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
36協定が結ばれている場合、上司からの残業命令に従わなければ、労働契約や就業規則の労務提供義務に違反することになります。ただし、「家族の介護」の場合は、所定外労働の免除制度があり、「育児等の家庭的な事情」などの事情がある場合にも、残業を断ることができると考えられます。
一方、就業規則に「時間外労働を命ずる定め」がない場合や、36協定が締結されていない場合、会社は残業を命ずる根拠を持たないことになりますから、当然、労働者は残業を拒否することができます。会社は拒否されたことを理由に、制裁処分することはできません。
本来は、労働者は私生活の場において労働する義務はありません。しかし、どうしても持ち帰って仕事をしなければならない状況が生じ、使用者に自宅に持ち帰って仕事をするように命じられた場合は、使用者はなんらかの手段で自宅での労働時間を把握し、適正な賃金を支払わなくてはなりません。
しかし、自分の判断で仕事を自宅に持ち帰った場合は、「労働時間」にはあたらないと考えられますので、賃金も発生しないことになります。
つまり、接待が労働時間になるかどうかの判断は、「できれば参加するように」という程度のものなのか、「絶対に参加するように」という使用者の特命によるものなのか、また、目的や内容、出席者の立場や地位、置かれた状況など総合的な状況によるということです。
一般的には、接待は労働時間に含まれないと解釈される場合が多いと思います。
有給休暇の付与日数
■週の労働日が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上働いている場合
■週の所定労働時間が30時間未満の労働者
また、週所定労働時間が30時間未満かつ所定労働日数が週4日、又は年間216日以下の労働者は、所定労働日数に比例した日数を与えられますが、もともとは1日7時間週3日の契約で働いていて、その日数に応じた年次有給休暇を与えられていたけど、年度の途中に1日7時間週5日の契約に変わったという場合、年次有給休暇の日数は発生する基準日の労働条件で決まるので、基準日において週5日の契約で働いていたならば、通常の労働者と同じ日数が付与されます。
反対にこれまで週5日で働いていたけど、週3日に変更になった場合も基準日の週所定労働日数に応じた日数が付与されます。
なお、過去すでに付与された日数は、労働条件の変更に伴って増えたり減ったりはしません。
*管理監督者にも有給休暇があります。
*有給休暇を認めることにより、事業の正常な運営を妨げることになる場合は、会社は「取得時季の変更」を求めることができます。しかし、時期の変更を行使するための条件は限定されており、単に「多忙だから」「代わりの従業員がいないから」という理由だけでは認められません。
ただ、事業の正常な運営を妨げる場合、使用者は年次有給休暇の取得時季を変更する(別の日の取得を求める)権利が認められており、代替要員の確保など必要な措置を講じる上で年次有給休暇の取得予定や理由を予め知っておくことは許されることといえるでしょう。しかし、時季変更権とは無関係に利用目的を執拗に求めたり、理由によって与えないような場合は、違法性の高いものと思われます。
なお、年次有給休暇の際に支払うべき賃金としては、次の3種類の賃金が定められています。
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法による標準報酬日額
①、②の賃金を原則として、いずれを選択するかは就業規則その他において明確に定めておく必要があります。③の賃金を選択することを労使で協定した場合は、例外的に③の賃金を支払えばよいこととされています。
このため、転勤命令が有効であるかどうかの判断が問われるわけですが、
① 労働契約上の根拠があること(労働契約の際に転勤があることを認識)
② 慣行があること
③ 個別の労働契約に勤務地を限定する特約がないことの条件が満たされる場合は、その転勤命令は有効であるという裁判例があります。
転勤拒否が容易に認められることになると、会社にとっては人事異動が困難になり、通常の経営活動に支障が生じてしまいます。転勤命令は簡単に拒否できず、合理的な理由なく拒否すれば解雇の対象になる場合もあります。
就業規則に「会社は、業務上の必要がある場合には、会社が社員に貸与した机、ロッカー、キャビネット等を開けることができる。」旨を定めてある会社もあります。
しかし、「持ち物検査」的な意味で、不在中に中を点検するという行為であれば問題があります。
なお、同じような意味で、パソコンを業務に使用するために社員に貸与している場合に、会社は必要に応じて、パソコンの閲覧・チェックをする権限を有しているものと考えられます。
なお、セクシャルハラスメントは、男性から女性に対してだけでなく、女性から男性に対しての場合も対象となります。
*セクシャルハラスメントには、性的な言動に対する労働者の反応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給などの不利益を受ける「対価型」(性的な関係を要求したが拒否されたため解雇するなど)と性的な言動により就業環境が害される「環境型」(たびたび腰などを触られた労働者が苦痛に感じて就業意欲が低下するなど)があります。
男女雇用機会均等法には、制服に関する禁止規定はありませんが、女性にだけ制服を支給する合理的な理由がない限り、女性にだけ制服を強要することは認められません
制服については、男女ともに支給する、男女とも支給しない、希望者のみに支給するなどが望ましいあり方でしょう。
制服着用の強要によって苦痛を感じることがあれば、都道府県労働局の雇用均等室に相談してみましょう。
対応方法としては、以下の方法が考えられます。
① 「いつ、どこで、誰が、どのような事を行ったか。その後どうしたか。近くに誰がいたか」など具体的な状況を出来るだけ詳細にメモする。日常的に行われている場合は日々の記録をつける。
② 悪口や暴言などについては、内容をメモするほか、録音などをとる。隔離されている場合や落書きなどの中傷等対象物があれば写真にとる。
③ 使用者には、安全配慮義務・職場環境配慮義務があるため、加害者である上司等を監督する立場にある管理監督者、または、社内に苦情処理窓口があれば、そこへ相談する。
④ 労働組合があれば、組合から改善を求めて交渉してもらう。
⑤ 社内で改善がなされない場合は、総合労働相談コーナーに相談し、労働局長による助言・指導、あっせんを求める。
⑥ 弁護士に相談、または裁判所を利用する。
また、職場でのいじめが原因で精神的疾患を発症した場合、労災保険が受けられる可能性もあります。労災保険については事業所を管轄する労働基準監督署に相談してみましょう。