アルバイト・パート 求人・雇用でトラブルにならないためのQ&A
『労働条件は詳しく分かりやすく』
募集主は、募集に応じて労働者になろうとする応募者に対し、仕事内容や賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければなりません(職業安定法第5条の3)。
また、明示するにあたっては、相手に誤解を与えぬよう、わかりやすく的確な表示に努めなければなりません(職業安定法第42条)。
応募者の心理としては、「委細面談」だとなかなか応募に踏み切れませんが、仕事内容や労働条件が具体的に記載されているほど、自分の働いている姿がイメージでき、応募する確率が高くなります。
●虚偽や誇大な表現は禁じられています
応募者を集めるため、ついオーバーな表現を使ったり、甘い言葉で誘ったりするのは避けてください。募集主は虚偽のつもりではなかったとしても、ふとした誤解から応募者が虚偽広告と感じて相談してくるケースはとても多いものです。広告内容は事実に基づいた内容で作成し、誇大な表現やイメージ先行の表現は避けてください。なお、職業安定法では、虚偽の広告または虚偽の条件を呈示して募集を行った者は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処すると定められています(第65条)。
●給与金額の表示は最重要ポイント
当協会会員の求人メディアでは、誰もがもらえる最下限の給与金額を必ず表示いただいています。月給、時給問わず、その金額に固定残業手当が含まれている場合は、手当名、金額、残業時間数について、できるだけ明示するようお願いしています(例:『固定残業手当5万円(残業20時間分)含む』)。
なお、『○歳例○万円』などの例表示や『○万円(家族手当含む)』といった属人的な条件で支給される手当を含んだ金額は、最下限額とは見なせません。誰もがもらえる金額を書いた上で、例として表示してください。
●試用期間などの労働条件が異なる場合は
「時給1000円(ただし、試用期間中の時給は900円)」など、労働条件が異なる期間がある場合は広告内にその内容を表記してください。なお、期間が一律でない場合は、『1~3カ月』などのように幅を持たせても構いません。また、通勤交通費や入社祝金・支度金などに、通勤距離や上限金額、勤続期間など支給要件の規定がある場合は、その旨も記載しましょう。
労働基準法は第1条で「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすものでなければならない。」という理念をかかげ、就職から退職までのことに関してさまざまな条件を定めています。
特に賃金について「これだけの額以上の賃金を支払わなければならない」ということを定めた法律として「最低賃金法」があります。雇用主は原則として、この賃金を下回って、人を雇うことはできません。
金額は、都道府県ごとに地域別最低賃金として下記表の金額が定められています。また、業種によっては特定(産業別)最低賃金も別途定められており、いずれか高いほうが適用されます。なお、派遣労働者にも、派遣先に適用される地域別最低賃金または特定(産業別)最低賃金が適用されます。
最低賃金表(地域別最低賃金額 単位:円)
※厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧 ページを表示します。
●日額で定めている場合は最低賃金をクリアしているかの確認を
日額で定めている場合は、その金額を1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額と最低賃金額を比較してください。※具体的な算定の方法や特定(産業別)最低賃金の適用対象かどうかなど詳しくは、労働基準監督署にお問い合わせください。
応募者は、いつ採否連絡が来るか、不安を抱いて待っています。できる限り早めの対応をお願いします。一般的には応募から一週間程度の場合が多いようですが、早い返答に越したことはありません。
メールでの返信でも問題はありませんが、言葉遣いなど、応募者の気持ちを充分に考えた返信を心がけてください。
賃金とは「労働の対償として雇用主が支払う」ものです。
まず労働があって、その報酬として賃金が存在するのです。3日間働いた者には、その対償としてその分の賃金は支払わなくてはなりません。ただし、無断欠勤や遅刻等の経営秩序違反に対するペナルティ規定を、就業規則に定めておき適用することは可能です。
●入社前研修や教育訓練中の賃金
雇用主が内定者に対し、雇用契約の範囲内で、実際に業務・仕事に従事させるに当たって、必要な知識・技能を修得する教育訓練を行う場合、その受講を指示された内定者としては受講せざるを得ないことになります。このことから、教育訓練を受けることも労働に従事すべき義務の一環で、研修内容が業務・仕事に関連し受講が義務付けられている場合は、労働に従事したものとして賃金を支払う必要があります。入社前研修の賃金については、最低賃金以上を支払えば、入社後の賃金よりも低い設定でも問題はありません。
●試用期間や研修期間の賃金
労働者の適性をはかるため、試用期間や研修期間を設けてその賃金を定める場合、特に法律上の明確な規制はありません(ただし、最低賃金以下は法律違反です)。しかし、試用期間だからといって、ほかの労働者と大きな差をつけることは好ましくありません。試用期間中の賃金が本採用と異なる場合は、求人広告にその金額の表記が必要となります。試用期間中の賃金表記がないことで読者・ユーザートラブルが多発しておりますので、必ず、表記してください。
●インターンシップの賃金
インターンシップの実習が、見学や体験的なもので雇用主からの指揮命令を受けていない場合、労働者とは認められませんので賃金支払いの対象となりません。しかし、直接、生産活動に従事させ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合は、労働者に該当するものと考えられ、賃金の支払いが必要となります。
●遅刻者の賃金カット
「一回の遅刻につき、罰金10万円」など多額の減給制裁を科すことは労働基準法により許されません。ただし、就業規則で「減給の制裁規定」を定めておき、労働基準法に定める制限を超えない範囲内で賃金を減額することは可能です(労働基準法第91条)。例えば、「遅刻3回につき○×円を賃金から差し引く」と定めることはできます(1事案について平均賃金1日分の50%、1カ月分の賃金の10%を超えないことが要件)。
また、欠勤、遅刻などによって就労しなかった分の賃金は差し引いても問題ありません。5分の遅刻を5分ぶんだけカットすることはノーワーク・ノーペイの原則(職務に従事しなかった期間・時間については、賃金を支払わなくてもよい)に反しませんが、5分の遅刻を30分の遅刻としてカットするような処理は違法となります。
少しの遅刻に対してあまり多額の減給をすることは法の趣旨にも反しますし、労務管理上良い効果があげられるか十分検討する必要があります。
●連絡がつかない者へ支払う賃金
勝手に辞めたり、連絡もなく急に来なくなった労働者に連絡がつかないため給料が支払えないという場合は、給料の支払いを振込とする契約をしていて、振込先が分かっているときは、給料日に振り込んでおくべきでしょう。
そうでない場合は、本人がいつ取りに来ても支払えるようにしておかなければなりません。賃金の支払いの時効(賃金の請求権)は2020年4月に改正され、それまでの2年から5年(労働基準法第115条 ただし当分の間は3年)になりました。時効期間は改正時からさかのぼることはしないようですが、2020年4月以降に発生した賃金について延長された期間内に本人が給料を取りに来た場合は、支払わなくてはなりません。なお、退職金についての時効は変更がなく5年となっています。
参考資料(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdf
労働基準法では、「労働時間」とは「指揮監督の下にある時間」のこととしており、「拘束時間から休憩時間を引いたもの」とされています。
ミーティングや必要事項の伝達など実質的な仕事が行われているならば、「労働時間」と考えられますので、当然、賃金を支払う必要があります。仕事に必要な準備時間や仕事完了のための時間は、指揮監督下になくとも業務上必須であれば労働とみなされることがあります。
労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の適用は強制的なもので、雇用主の判断や労働者個人の意思によって適用の有無を決めることはできません。試用期間中の者といえども適用除外に該当しませんので、採用したら雇用主は速やかに被保険者の届け出をしなければなりません。
健康保険・厚生年金保険は、アルバイトやパート等(パートタイム労働者・有期雇用労働者)が、次の2つのいずれにも該当する場合は原則として被保険者とされます。
・1カ月の所定労働日数が常用雇用者の4分の3以上
・1週間の所定労働時間が常用雇用者の4分の3以上
ただし、これは一つの目安であって、これに該当しない人でも、就労の形態や内容等を総合的に判断した結果、常用的使用関係が認められた場合は被保険者となります。
また、上記に該当しない人でも、下記の5つの要件すべてを満たす場合も、被保険者となります。
①週の所定労働時間が20時間以上あること
②雇用期間が1年以上見込まれること
(2022年10月1日からは、雇用期間が継続して2か月以上が見込まれること)
③賃金の月額 が88,000円以上であること
④学生でないこと
⑤常時501人以上の企業(特定適用事業所)であること
また、500人以下であっても労使の合意があれば、加入の対象になります。
(2022年10月1日からは、常時101人以上の企業(特定適用事業所)であること
また、100人以下であっても労使の合意があれば、加入の対象になります。)
●手続きには期限があるため、すみやかに
健康保険・厚生年金保険は5日以内に年金事務所で、雇用保険は翌月10日までにハローワークで、それぞれ加入の手続きを行わなければなりません(介護保険への加入は、40歳の時点で自動加入となります)。入社したら、なるべく早く手続きをお済ませください。
未成年者を雇用する場合は、原則として、満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了していることが必要です。例外的に児童(満15歳に達した日以降最初の3月31日までの者)を雇う場合は、労働基準監督署の許可が必要です。未成年者と労働契約するときは、下記の点に留意ください。
①親権者または後見人が、未成年者に代わって労働契約を締結することはできません(労働基準法第58条)。
②未成年者の賃金は必ず本人に支払わなければなりません(同法第59条)。
③年少者(満18歳未満の者)を雇う場合には、事業場に戸籍証明書(住民票記載事項証明書でよい)を、児童は戸籍証明書に加え、学校長の証明書および親権者または後見人の同意書を備え付ける必要があります(同法第57条)。
④年少者の労働時間は、1週40時間、1日8時間以内でなければなりません。原則、変形労働時間制やフレックスタイム制の禁止、時間外労働、深夜労働(午後10時~午前5時)および休日労働の禁止が定められています。(同法第32条、第60条、第61条)
⑤年少者の危険有害業務、酒席に侍する業務などの就業は禁止されています(同法第62条)。
満18歳であれば、高校生でも上記の点に関わらず働けることになりますが、アルバイト禁止の学校もありますので、学業との両立に配慮してください。
履歴書は個人情報そのものです。雇用主は、募集・採用・雇用後の場面で、応募者および従業員の個人情報に十分注意する必要があります。万が一、個人情報の漏洩などが起これば、企業の信頼を失うことになります。採用者の履歴書については、第三者の目に触れないよう適正な管理が必要です。
●取扱いのルールを定めましょう
まず、応募者の履歴書を取り扱う際の社内ルールを決めましょう。できれば社内規定とするなど重要な位置づけにして、全従業員へ周知を図ります。
履歴書を扱う担当者の範囲、保管や破棄の方法、返却の要望があった場合の対応など、できるだけ具体的なガイドラインが望ましいでしょう。
●履歴書はできるだけ返却を
求人広告を見た応募者から「不採用になった会社から履歴書を返却してもらえない」、「応募を辞退した会社から個人情報が悪用されないか心配だ」などの電話相談も増加しており、個人情報に関する考え方は厳しくなっています。不採用者の履歴書は、できるだけ返却するようにしてください。
履歴書を返却しない場合は、あらかじめその旨を広告上に表記するなど応募者に伝えておくことが望まれます。広告スペースなどの問題で表記できない場合は、応募電話の際、あるいは面接の時に説明するようにしてください。
●選考書類の取扱い
採用時でなく、面接時に住民票の提出や運転免許証の提示を求めていませんか。採用前に本籍地が表示してある書類や身分証明書を求めることは、就職差別につながるおそれがあります。どうしても必要な場合は、応募者が、どの証明書を提出するか選択できるようにしましょう。
また、採用選考時に健康診断書を提出させたり、健康診断を実施することは、必要ない事項を把握する可能性があり、結果就職差別につながる可能性もありますので、必要性をよくご検討ください。
☆次のようなことは絶対に避けて!
・履歴書が机の上などに出しっぱなしになっている
・履歴書を担当者以外が見る
・履歴書を返却すると説明しながら返却しない
・相手を間違えて返送する
・履歴書を紛失してしまう
・別の目的で個人情報を利用する
・不採用者の履歴書を知り合いや関連会社に回す
☆個人情報とは
個人情報保護法第2条1項では、個人情報を「生存する個人の情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)」と規定しています。
労働条件を示さなかったり、口頭で伝えたことによるトラブルが後を絶ちません。労働条件が不明確なまま働いたことによるトラブルを未然に防止するため、労働基準法、パートタイム・有期雇用労働法、労働契約法では「労働条件の明示」を定めています。
労働基準法(第15条)では「労働契約の締結に際し、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と定めており、また、労働契約法(第4条第2項)では「労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとする。」と定めています。
労働者と労働契約を結ぶときには、次の事項については必ず書面で明示しなければならないとしています。
●書面明示しなければならない事項
①労働契約の期間
②就業の場所・従事すべき業務
③始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
④賃金の決定(額)、計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期
⑤退職に関する事項(解雇の場合の事由を含む)
⑥昇給に関する事項(必ずしも書面にしなくてもよいが書面明示が望ましい)
なお、以下の事項については、定めがある場合は明示する必要があります。
⑦退職手当が適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払方法、支払時期
⑧臨時に支払われる賃金、賞与等、最低賃金額に関する事項
⑨労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
⑩安全・衛生に関する事項
⑪職業訓練に関する事項
⑫災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑬表彰、制裁に関する事項
⑭休職に関する事項
パートタイマーやアルバイトなどを雇う場合は、パートタイム・有期雇用労働法により上記の事項に加え、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」を文書の交付等により明示しなければなりません。また、時間外割増賃金について「固定残業代」で支払っている場合は、内容についてしっかり説明及び明示するようにしましょう。
●労働条件を明示するには
本人に渡す辞令や労働契約書(労働条件通知書)にその労働者に適用する労働条件を明記してください。本人に適用する部分を書面にして就業規則を交付することでも差し支えありません。
※法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効であり、無効となった部分については、法律で定める基準によることになります。
●労働者と雇用主は対等
就業形態の多様化、個別労働紛争の増加等に対応し、労働者と雇用主の労働関係が良好なものとなるよう施行された法律に「労働契約法」があります。
労働者と雇用主は対等であり、両者が合意すれば労働契約を変更できることや、労働者が一方的に不利になる労働契約の変更はできないことなどが定められています。平成24年の改正では、下記のルールが規定されました。
①無期労働契約へ転換…有期労働契約(*)が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込により、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。
*有期労働契約とは、パートタイマー、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば新しいルールの対象となります。
②「雇止め法理」の法定化…最高裁判例で確立した「雇止め法理」がそのままの内容で法律に規定されました。反復更新された有期労働契約で、その雇止めが解雇同様と認められる場合など、一定の場合には雇用主による雇止めが認められない事になります。
また、「パートタイム・有期雇用労働法」では、同一企業で働く正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給・手当・賞与などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることを禁じています。
■労働条件通知書モデル様式(厚労省HP)を参考にしてください。
・一般労働者用(常用・有期雇用型)
・短時間労働者用(常用・有期雇用型)
労働基準法では、原則として「労働時間は1日8時間、1週40時間」(特例措置対象事業場である商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業のうち10人未満の事業所は1週44時間)と定めていますが、この原則になじまない業種や業務もあります。そこで労働基準法では、一定の条件のもといろいろな労働時間(変形労働時間制)を認めています。変形労働時間制には次の4つの制度があります。
●月末がいつも忙しいなど─1ヵ月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)
1日8時間1週40時間の原則を超えても、1カ月で平均して1週間当たり40時間以内になっていればよいという労働時間制です。この変形労働時間制では、1日、1週当たりの所定労働時間の上限はありません。
例えば、第4週目が忙しい場合、月初めに労働時間を6時間あるいは7時間と短くし、第4週目を10時間と定めたとしても、平均して1週40時間を超えていなければ、時間外労働とはなりません。この制度を採用するにあたっては、労使協定を締結または就業規則で定め、労働基準監督署に届け出ることが必要です。
●育児や介護をする労働者がいるときなど─フレックスタイム制(労働基準法第32条の3)
あらかじめ、1カ月以内の総労働時間を定めておき、そのうえで、1週間当たりの労働時間が40時間(44時間)を超えなければ、労働者が始業・終業時間を選択して働くことができる制度です。この制度を採用する場合は、労使協定を締結し就業規則などで、「始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねること、労働者の範囲、清算期間(1カ月以内)、総労働時間(法定労働時間内)、基準となる1日の労働時間」などを定める必要があります。
●1年のうち一定の季節が忙しいなど─1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4)
一定の季節が忙しいというような事業繁閑のある労働時間業場において、忙しい時期に労働時間を長くし、閑散期は短くして、1年間の労働時間を効率的に使用できるという制度です。
1年以内の一定の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間以下の範囲内とすれば、特定の週または特定の日に法定時間(1日8時間または1週40時間)を超えて労働させることができます。この制度を採用するに当たっては、労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要です。10人以上の労働者を使用している事業場については、就業規則に記載し、これも労働基準監督署に届け出なければなりません。
●急に忙しくなるなど─1週間単位の非定形的変形労働時間(労働基準法第32条の5)
旅館や飲食店などで、団体客の予約が入るなど、急に忙しくなる場合があります。このように、日ごとの業務量の予測がつきにくいような事業(小売業、旅館、料理・飲食業で常時使用する労働者が30人未満)においては、労使協定を結び、前週末までに翌週の各日の労働時間を週40時間の範囲内で1日10時間まで労働させることができる制度です。ただし、この通知は必ず書面で行わなければなりません。
※変形労働時間制では、妊産婦が請求した場合は、1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制および1週間単位の変形労働時間制の規定に関わらず、法定労働時間を超えて労働させてはなりません。
☆18歳未満には適用できない
満18歳に満たない者には、1カ月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、1年単位の変形労働時間制および1週間単位の非定型的変形労働時間制を適用することはできません(労働基準法第60条)。
■変形労働時間制度の具体的な方法、対策については、労働基準監督署へご相談ください。
休憩時間は、「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を労働時間の途中に一斉に与えなければならない(労働基準法第34 条)」と定められています。
仕事上の理由で一斉休憩の原則を適用することが困難な場合は、
①一斉に休憩を与えない労働者の範囲
②休憩の与え方について
の労使協定を締結することにより職場の実情に応じた休憩時間を与えることが可能です。
また、休憩時間は昼休み40分間、午後3時に20分というように分けて与えることもできます。休憩時間は、変形労働時間制で勤務した場合のように、1日10時間や11時間働いたときも、法律上は1時間の休憩時間でよいとされています。
なお、一斉休憩を与えなくてもよい例外となる事業は、運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、郵便通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署です。
●昼休みの電話番、手待時間は労働時間となる
休憩時間は、労働から離れることを保障された時間ですから、休憩時間中は労働者の自由にさせなければなりません。
したがって、昼休み中の食事を社内でとることを義務付けたり、電話をとらせたりすることはできません。
また、現実に作業はしていないが待機しているという「手待時間」は、一定の拘束下にあって自由に利用できませんので労働時間です。何もしていなくても、休憩時間とすることはできません。
☆休憩時間中に制限することは
休憩時間の利用について、事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り問題ありません。例えば、休憩中の外出について、所属長の許可を受けさせることは、必ずしも違法ではありません。
労働者の心身の疲労を回復させ、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、労働基準法(第39条)では、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しています。
正社員、アルバイト、パートタイマーなど雇用形態や勤務形態にかかわらず、所定労働日数の8割以上を出勤したときは、その所定労働日数に比例した日数を与えられます。週の所定労働時間が30時間以上の者・週5日以上勤務の者は、呼称にかかわらず正社員と同じ扱いになりますのでご注意ください。
例えば、週に3日のアルバイトで、週所定労働時間が30時間未満ならば、6カ月経過後に5日の有給休暇を与えなければなりません。なお、パートタイマーやアルバイトで、週の所定労働日数が決まってない場合は、6カ月働いた時点で実際に勤務した日数を所定労働日数とみなして計算すればよいと考えられています。
週の所定労働日数(時間)が短い者の有給休暇比例付与日数
●最初は6カ月後に付与
最初の付与は、「6カ月間の継続勤務後」、つまり、6カ月間継続勤務し、その8割以上を出勤したときです。
2回目以降は、1年間継続勤務(8割以上出勤したとき)するごとに1日ずつ増加し、3年6カ月目からは1年継続勤務するごとに2日ずつ増加されます。なお、別表の有給休暇の日数は、最低の日数ですから、これを上回る日数を付与することは企業の自由です。
週の労働日が5日以上または週の所定労度時間が30時間以上の者の有給休暇
●会社は有給休暇の取得を拒めない
有給休暇は、労働者が取得を申し出たときは無条件で与えなくてはなりません。
ただし、その労働者が休暇を取得することによって、事業の正常な運営を妨げることになる場合には「別の日の取得(時季の変更)」を求めることができます。これは単に、「人が足りない」「忙しい」という理由では変更できません。
●有給休暇取得の申し出の時期
有給休暇の申請時期について法律上の定めはありませんが、雇用主が時季の変更を求める時間的余裕を考慮し、一般的には前日までに申し出れば問題はないと考えられています。
●有給休暇の計画的付与
有給休暇取得の促進を目的として、会社で一斉に、または、各部署などであらかじめ計画的に休暇を取得しようという制度です。この制度を導入するには労使協定(書面)が必要です。また、労働者が自由に指定できる日数として最低5日は残しておかなければなりません。
●有給休暇の賃金
有給休暇の賃金は、月給者の場合は
①平均賃金
②所定労働時間に労働した場合に支払われる賃金
③健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額(労使協定必要)
のいずれかの方法により支払わなければなりません。
☆有給休暇は時間単位での取得も
年次有給休暇は日単位で取得することが原則ですが、労働基準法の一部が改正され、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになりました。パートタイマーなどで有給が5日しかない場合も取得できます。
☆有給休暇取得に理由は不要
有給休暇をどのように利用するかは労働者の自由で、雇用主がその理由のみによって休暇を与えたり与えなかったりすることはできません。労働者からの請求権は2年間有効ですから、与えられた年にとらなかった有給休暇は、翌年にとることができます。
休日とは、労働義務がない日のことをいい、労働基準法第35条では、「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。」と定めてあり、週休制をとれない場合は4週間に4日以上を与えることと定めています。しかし、休日の曜日の定めはありません。
1週間40時間の労働時間の原則がありますので、休日の与え方によっては、法定労働時間を超えてしまいますから、超えた分については時間外労働の割増賃金が必要となります。
週休2日制の事業所では、2日のうちどちらか一方の休日が法定休日となります。法定休日以外の日に労働をさせても休日労働とはなりませんが、法定労働時間を超えた分については時間外労働の割増賃金が必要です。
●法定休日を変更せざるを得ないような場合
就業規則などで規定すれば、休日 を他の日に振り替えることができます(振替休日)。ただし、振替日を特定し、前日までの通知が必要です。振替休日は、休日と労働日を交換することですので、休日労働とはなりません。これに対し、代休とは、既に行われた休日労働の代償として以後の特定の労働日の労働義務を免除するものですから、この休日労働が法定休日労働に該当する場合は、代休を与えたとしても、35%以上の割増分は支払わなければなりません。
☆国民の祝日の扱いは
週1回の休日が与えられている限り、たとえ国民の祝日に休ませなくても、法律違反とはなりません。しかし、「国民の祝日に関する法律」において、『国民の祝日』は、国民がこぞって祝い、感謝し、または記念するために休日とすることが定められていますので、労働者を休ませることが望まれます。
例えば「週5日、1日5時間」の契約を結んで働いている期間は、仕事がないからという理由でシフトを減らしたり、3時間で帰らせることは本来できません。雇用契約にあたって日数、時間帯をお互いの了解のもとで決定しているわけですから、会社はその時間は労働を提供してもらい、賃金を支払う義務があります。
また、会社都合による休業の場合は休業手当(平均賃金の60%)を支給しなければならないとされています。
パートタイマーやアルバイトであっても、仕事や責任などが正社員とほとんど変わらない働き方なのに、賃金や待遇が見合っていないため、労働意欲を失わせてしまうという状況があります。
「パートタイム・有期雇用労働法」は、こうした問題を解消し、適正な労働条件の確保や福利厚生の充実など、雇用管理の改善等を目的としています。
この法律の対象である「パートタイム労働者(短時間労働者)」は「1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義され、「有期雇用労働者」は事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者」と定義されています。「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び名は異なっていても、この条件にあてはまる労働者であればパートタイム・有期雇用労働法の対象となります。
パートタイマーの多くは、仕事と家庭の両立を考慮し、生活のリズムにあった労働時間を選んで応募しています。雇用主が一方的に労働時間の変更をしたり、残業を命じたりすることのないよう努めてください。
●パートタイム労働者・有期雇用労働者の契約更新と雇止め
雇用主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者と期間のある労働契約を結ぶときは、契約期間満了時に更新の有無があるかどうか明示が必要です。更新する場合があるときは、「更新する場合、しない場合の判断基準」を明示しなければなりません。
雇用を継続しない場合や、有期労働契約を3回以上更新し、または契約期間が1年を超えて継続勤務しているパートタイム労働者・有期雇用労働者を雇い止めとする場合は、契約期間満了日の30日以上前に、その予告をしなくてはなりません。(契約更新をする場合は、その都度、雇用契約書の交付が必要です。)
有期雇用契約の更新を何度も繰り返していると、労働者側に「更新期待権」というものが生じ、期間満了の際、雇用主が自動的に契約更新を拒むことはできなくなります。
●パートタイム労働者・有期雇用労働者にも労働基準関係法が適用されます
パートタイム労働者・有期雇用労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に予告をするか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。また、所定労働時間を超えて労働させた場合は、割増賃金の支払い(同法第37条)が必要です。要件を満たしたパートタイム労働者・有期雇用労働者には有給休暇を付与しなければなりません(同法第39条)。
そのほかにも、常時使用するパートタイム労働者・有期雇用労働者に対して健康診断の実施(労働安全衛生法第66条)、妊産婦や女性パートタイム労働者・有期雇用労働者に対する有害業務の制限、産前産後の休業等の母性保護措置を講じなければなりません。
☆パートタイム労働者・有期雇用労働法のポイント
①労働条件の文書交付
雇い入れの際、労働基準法に定められた項目の他に『昇給の有無』『退職手当の有無』『賞与の有無』『相談窓口』を明示しなければなりません。
②就業規則作成の手続き
パートタイム労働者・有期雇用労働者に適用される就業規則を作成・変更する場合は、パートタイム労働者・有期雇用労働者それぞれの過半数を代表する者の意見を聞くように努めなければなりません。
③均等・均衡待遇の確保の促進
同じ企業で働く正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給・手当・賞与などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されています。
④正社員への転換の推進
事業主は、雇用しているパートタイム労働者・有期雇用労働者から正社員へ転換する機会を設けることが義務づけられています。
⑤事業主が講ずる措置の内容などについての説明義務
事業主は、雇入れ時には『待遇の差別的取扱いが禁じられていること』『賃金の決定方法』『教育訓練の実施』『福利厚生施設の利用』『通常の労働者への転換を推進するための措置』についての説明義務があり、更に求められた場合には『労働条件の文書交付等』『就業規則の作成手続』『正社員との待遇の違いやその理由』などについて説明する義務があります。
⑥相談のための体制の整備義務
事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備をしなければなりません。
⑦パートタイム雇用・有期雇用管理者の選任
事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者が常時10人以上雇用する事業所ごとに、『パートタイム雇用・有期雇用管理者』を選任するよう努める必要があります。
⑧苦情処理・紛争解除の援助
事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者から苦情の申し出を受けたときは、自主的な解決を図るように努める必要があります。
●罰則
法の実効性を高めるために以下の罰則が規定されています。
・雇用管理の改善措置の規定違反に対する厚生労働省の勧告に従わない場合は事業主名を公表できます。
・厚生労働大臣は必要に応じて事業主に対して報告を求め、助言や指導・勧告を行うことができますが、事業主が報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料に処することができます。
・雇い入れに際して定められた文書交付を行わなかった事業主は、10万円以下の過料に処せられます。
労働者の尊厳や人格を侵害する「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」や「セクハラ」は、許されないものですが、とりわけ職務上の地位や人間関係を濫用して意図的に相手をいじめたり、嫌がらせを行ったりすることは許されるものではありません。
労働契約法は、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする(第5条)」と定めています。設備的な安全面はもちろんのこと、メンタルヘルスなどの精神的な衛生面についても配慮することが含まれています。
「いじめ・嫌がらせ」については、「本人同士の問題」や「業務上の指導」と区別が難しいときもあり、対応が難しいとの声もありますが、そでれも安全配慮義務に則って適切な措置を講ずる必要があります。違反した場合、労働契約法には罰則がありませんが、裁判で民法の不法行為や債務不履行責任などを根拠に、雇用主は損害賠償の支払いを命じられたり、刑事責任を問われることもあります。
・職場のパワーハラスメント
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる次のような行為をいいます。
①暴行・侵害
②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
③隔離・仲間外し・無視
④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
⑤業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
⑥私的なことに過度に立ち入ること
☆労働安全衛生法に基づく、ストレスチェック制度
労働安全衛生法では雇用主は常時使用する労働者に対し、1年に1回ごとのストレスチェックの実施が義務付けられています(従業員数50人未満の事業場は、当分の間努力義務)。また、高ストレス者として面接指導が必要と評価された労働者から申出があったときは、医師による面接指導を行うことが事業者の義務になります。
パートタイム労働者・有期雇用労働者については、1年以上、雇用継続されることが予定されている者および更新により、1年以上雇用継続される者で、1週間の労働時間数が同じ職場の人の4分の3以上働く者は義務の対象となります。
●応募者とは対等の立場で
採用面接者として最も大切なことは、応募者と対等の立場に立って接するということです。面接する側は、応募者が委縮せず、本来の姿を出せるよう迎えましょう。
客先からのクレームやトラブルに上手く対応できるか、打たれ強いかを判断するために、圧迫的な態度で面接を行うこともあるようですが、場合によっては人権侵害やパワーハラスメントととられる可能性もあるため注意が必要です。面接で相手に不信感を抱かせては元も子もありません。
横暴な面接官の対応にショックを受け、他の企業へ応募することも怖くなり就職活動が進められなくなったという応募者もいます。採否に関わらず、対等な立場での面接をお願いします。また、求人広告の内容と異なる説明は基本的にはしないようにしましょう。例えば、求人広告には経験不問と記載しているが、経験者の応募が多数あったなどの理由で、面接では「経験が必要」と求人広告とは異なる応募資格を伝えたり、募集職種では採用できないが、別の職種を紹介するなど、親切心からでも、相手の捉え方でクレームやトラブルになってしまうおそれがあります。
●聞いてはいけない質問
①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地など
②人生観、社会観、生活信条、支持政党や宗教等、思想・信条
③労働運動や学生運動、消費者運動などの社会運動
④家族の職業や収入、住宅事情、資産などの家庭環境や家族構成
職務に支障をきたすような既往歴がないか、面接で聞くことは禁じられていませんが、一律に排除せず現在の状況やケアなど聞いて、個別に判断するようにしてください。
2014年5月施行の自動車運転処罰法では、特定の病気などによって死亡事故を起こした場合の罰則が強化されたため、入社時に病気の有無を確認する場合もあると思います。差別につながらないよう確認の際は業務との関連性があることをていねいに説明してください。
●面接する前に
①話しやすい雰囲気を作りましょう
応募者は緊張状態にありますので、「今朝の行動」や「交通経路」など、応募者が話しやすいような話題から入りましょう。
②企業側から自己紹介を
まず、会社の現状や事業展開などを説明し、その印象を聞くなど、答えやすい質問設定をしましょう。他社で働いているなら、その仕事の流れを順に聞いていったり、転職理由など相手の立場を配慮しながら十分話を聞き、本音を聞き出し、ポジティブな理由があるかどうか、日々の不満がどこにあったかを聞いていきます。
③事実に即した行動などを聞く
抽象的な質問や価値観などの質問からは、論理的能力は分かっても、人物・人柄など本当の姿は分かりにくいものです。課題や成果を聞き、応募者の能力の範囲を確認しましょう。
④入社したら何をしたいか
募集職種が一つしかなくても、あえてこの質問を行うことによって目標やステップアップの具体的なイメージを聞きます。
⑤最後までていねいに
不合格と判断しても、最後までていねいな面接を保つことが貴社の好印象につながります。応募者は将来の顧客なのですから。
※応募者の対応に関する不満の苦情や相談が最も多く寄せられています。面接は、直接会って話をする機会だけにその印象はプラスにもマイナスにもなりますので、しっかり準備を整えて臨むようにお願いします。
解雇をする場合は、まず、解雇の理由が正当かどうかを判断しなければなりません。労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。合理的な理由とは、かなり重い理由であり、仕事上の多少の失敗などは該当しないのが一般です。試用期間中の者であっても簡単に辞めさせることはできません。
あらかじめ就業規則や労働契約書に、どんなときに解雇されることがあるか(解雇事由)示す必要がありますが、解雇事由を定めている場合でも、雇用主は労働基準法の法令に反しないよう、慎重に対応しなければなりません。雇用主が独自に判断した結果、解雇した労働者から民事訴訟を起こされたケースもありますので、解雇案件が発生したら、まず、労働基準監督署や知り合いの弁護士に相談されたほうがいいでしょう。
●解雇には、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇がある
①整理解雇・・・事業の縮小など経営上の理由で行うもの
②懲戒解雇・・・服務規律違反など、経営秩序に反した労働者に対する制裁として行うもの
③普通解雇・・・①②以外の理由で、労働契約を維持していくことが困難なため、やむを得ず行うもの(例:勤務成績が悪く指導を行っても改善の見込みがない、健康上の理由で長期にわたり職場復帰が見込めないなど)
いずれの解雇を行う場合でも、「解雇予告」が必要で、少なくとも30日前に予告するか、平均賃金の30日分以上の予告手当を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。平均賃金とは前3カ月に支払われた賃金の1日平均額です。
算定事由発生日以前3カ月間に支払われた賃金の総額÷算定事由発生日以前3カ月間の総日数
労働者の責に帰する重大な事由がある場合は、労働基準監督署に「解雇予告除外認定」を申請し、認定されれば解雇予告手当を支払わずに即時解雇することが可能です。
なお、次の者には、解雇予告を必要としないとされています。
①日日雇い入れられる者
②2カ月以内の期間を定めて使用される者
③季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される者
④試の使用期間中の者(14日以内)
●解雇予告除外認定
即時解雇を行うには、「労働者の責に帰すべき事由」について所轄労働基準監督署長に「解雇予告除外認定申請」をして、その認定を受けなければなりません。
労働基準監督署では、申請があったときは、従業員の勤務年数、勤務状況、従業員の地位や職責を考慮し、次のような基準に照らし雇用主・従業員の双方から直接事情等を聴いて認定するかどうかを判断します。
①会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
②賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
③採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
④他の事業へ転職した場合
⑤2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
⑥遅刻・欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合
解雇予告除外認定については、必ずしも上記の例示にこだわることなく総合的かつ実質的に判断することになっていますが、重大又は悪質なケースに限られるため、認められない場合は、解雇予告手当を支払う必要があります。
☆このような場合は解雇できません
①業務上のけがや病気のため休業している期間およびその後30日間
②女性労働者が産前6週間、産後8週間休業している期間およびその後30日間(労働基準法第19条)
労働者が早期に退職する場合について、あらかじめ定めた額を請求する約束をすることは認められません。これは、損害賠償を予定することで労働者が自由に会社を辞められなくなり、結果として、自由意思を拘束されたり、労働の強制につながることを防ぐ趣旨から設けられたものです。
労働契約における債務不履行には、期間の定めのある労働契約において、期間満了前に離職してしまった場合や、遅刻、無断欠勤、不注意による不良品の生産なども含まれると考えるのが一般的ですが、これらについて損害賠償額を予定することも違反となります。
しかし、労働基準法が禁止しているのは、あらかじめ違約金を定めることや損害賠償の額を予定することですから、契約不履行により現実に生じた損害についての賠償請求をすることは可能です。ただ、損害額を算定することは非常に難しく、判例では労働者が賠償すべき金額は損害の公平な分担という見地から減額されるケースが多いようです。
●早期退職者への罰則は規定できるか
民法(第627条第1項)では、雇用期間の定めのない労働契約については、退職を申し出て2週間経過すれば雇用契約が解除されると定めています。
したがって、入社早々に自己都合退職するからといって、罰則を課すことは一般的にはできないでしょう。しかし、労働者の解約の自由を不当に制限しない、合理的理由によるものであれば、就業規則に退職手続の要件を定めることができます。
☆損害賠償予定の禁止とは
労働基準法第16条では「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めており、労働者と損害賠償を予定するような約束を交わすのは一切認められていません。